コレステロール・中性脂肪
コレステロール・中性脂肪
コレステロールと中性脂肪は、いわゆる「油(脂質)」というジャンルのものです。同じジャンルですが、基本的に全くの別物です。
一方、共通点もいくつかあります。例えば、血液の中を移動するときに同じ船(リポ蛋白)に乗って移動します(水と油の関係で血液内を移動する時には船が必要です)。
また、これらが血液内に多すぎると、血管に負担を来し、動脈硬化の原因になることにより血管が詰まります。
このことから、コレステロールや中性脂肪が高いと、健康によくないと言われるのです。
・・・と、ここまでの話では、何が何だかわからないと思いますが心配しないでください。この後、詳しくわかりやすく解説します。
それでは、コレステロールと中性脂肪は何が違うのか見ていきましょう。
その前に、健康診断でよく耳にする「脂質異常症」について解説します。
「脂質異常症」とは?
あなたの体が正常に機能するために必要な三大栄養素として「炭水化物」「タンパク質」「脂質」があります。
その中で、血液中の「脂質」の量に異常がでることを『脂質異常症』と言います。
「脂質」には大きく分けて、2つ種類があり、一つは「コレステロール」で、もう一つは「中性脂肪」です。
コレステロール
コレステロールは、大きく分けて3つの種類があります。
①LDLコレステロ-ル(悪玉)
②HDLコレステロール(善玉)
③non-HDLコレステロール(中間)
ちなみに、①②③すべて合わせたものが「総コレステロール」です。
昔は、LDLコレステロールを直接測定することができなかったため、総コレステロールが悪玉の指標に使われていました。
しかし、近年では、LDLコレステロールが直接測定されるようになったため、総コレステロールではなく、LDLコレステロールを指標としている場合が多いです。
ただし、総コレステロールも大事な指標であることに違いはありません。
あなたが、健康診断等で「要精査」「要治療」と書かれる時は、大体、①のLDLコレステロールが高い時です。
やはり、「悪玉」と言われるだけあって、この数値が高いことが健康を害する一番の要因になります。
それでは、LDLコレステロールとは何か、なぜ悪玉なのかを簡単に説明します。
血液中のコレステロールは、食物から吸収される(約20%)ものと体内で他の栄養素から合成される(約80%)もので占められています。
食物からのコレステロールも、体内で合成されたコレステロールもすべて肝臓の「コレステロール倉庫」で管理され、必要なものが血液中に放出されます。
コレステロールは「油」なので、血液の「水」の中を移動するときには船が必要になってきます。それが「LDL号」なのです。
つまり、LDL号に乗って航海しているコレステロールのことを、まとめて「LDLコレステロール」と言います。
もっとわかりやすく言うと、肝臓という「港」の倉庫でコレステロールが管理され、それが、LDL号に積み込まれて血液という「海」を航海するイメージです。
LDL号は、コレステロールを体の中の必要な場所へ運搬するため血液という海に航海に出ます。しかし、その航海は安全なものとは限りません。
途中、『海賊』に襲われて船が沈没したりするのです。この海賊というのは、血管に負担をかける様々な因子ですが、これが、船を沈没させ、沈没した船は海の底に沈むのです。
海の底は、血管の壁にあたりますが、血管の壁に船が沈没すると、動脈硬化になるのです。船がたくさん沈没すればするほど、動脈硬化は強くなるのです。
この『海賊』というのは、遺伝、高齢、喫煙、高血圧、高血糖、腎臓病、血栓傾向等の動脈硬化危険因子です。
これらを、多く持っている人は、動脈硬化になりやすいため、なるべくLDL号の船の数を減らした方が安全だということです。
つまり、LDLコレステロールをいくつまで下げればいいかは人それぞれなのです。
『海賊』の数が増えれば増えるほど、厳しい管理が必要になるのです。
そのあたりをしっかり見極めて治療することが大切です。
高LDLコレステロール血症の診断の流れ
まず最初のステップは、「あなたは、高LDLコレステロール血症です。」と言われる基準を満たすかです。
つまり、コレステロールを積んだLDL号(船)がどれくらい航海に出ているかです。
以下に脂質異常症の診断基準を示します。
脂質異常症 診断基準
LDLコレステロール (正常範囲:70-139) |
140以上高LDLコレステロール血症 |
120-139 境界域高LDLコレステロール血症 | |
HDLコレステロール (正常範囲:40-100) |
40未満低HDLコレステロール血症 |
健診等でLDLコレステロールが140を超えると「高LDLコレステロール血症」と診断されます。
あなたのLDLコレステロールの値は?
あなたの「LDLコレステロール」のレベルはどれですか?
あなたのLDLコレステロールの目標値は?
診察と詳細な血液検査の結果で判断します。
なぜLDLコレステロールは高くなる?
「高LDLコレステロール血症」と診断されたら、次に大切なのは、その原因です。
みなさんのイメージでは、 「高LDLコレステロール血症」の人は、すべて食べ過ぎが原因と思っているかもしれませんがそうではありません。
一部の人は、「家族性高コレステロール血症(FH)」と言って、遺伝的に、LDLコレステロールが血液内にたまりやすいのです。
そのような人は、目の黒い部分に白い三日月ができる『角膜輪』やアキレス腱が太くなる『アキレス腱肥厚』等の初見が見られます。これらの診断は、専門家の診察が必要です。
また、甲状腺の病気が隠れていて、その影響でLDLコレステロールが高くなる方が結構います。その場合、自覚症状に乏しいため気づかない事が多いです。
そして、当然、普段の食生活の影響は重要です。
高LDLコレステロール血症の治療の流れ
高LDLコレステロール血症と診断されても慌てないでください。
高LDLコレステロール血症と診断されるのは、LDLコレステロールが140以上ですが、『そのすべての人がすぐ薬を飲まなくてはならない!』わけではないのです。
実は、LDLコレステロールが単独で血管に障害をもたらすわけではなく、それ以外に、共犯者がどれだけいるのかが問題なのです。
共犯者とは、先程示した『海賊』たちです。代表的なところで、糖尿病や高血圧、年齢も海賊になりうることがあります。
このように、LDLコレステロールは、個々の体の状況、さらに、今どうなのか、これからどうなのかといった時期的な問題も考慮して治療目標値が決まるのです。すべての人が同じではないのです。
中性脂肪(TG)
中性脂肪とは、一言で言うと、あなたの体脂肪の中身そのものです。
「体脂肪なんてなければいいのに!」とよく聞きますが、実は、とても大事なものなのです。
体脂肪はいわば、エネルギーの貯蔵庫であり、いざというときに体脂肪を分解してエネルギーに変えるのです。
車に例えると、車体に体脂肪がくっついていると仮定します(実際はついてませんが)。万が一山道でガソリンが切れてしまったとしても体脂肪を分解してガソリンに変えることができるのです。
つまり、人間の体も、多少食事を摂取しなくても、ガソリン切れすることがないのです(車は体脂肪がないのでガソリンが切れたら終わりです)。
以上より、中性脂肪というものは、ガソリンを固形にしたイメージであり血液中や体脂肪中に存在し、いざというときに備えます。
中性脂肪(TG)が高いとどうなる?
中性脂肪は、体内に過剰にあると大きな問題を引き起こします。
血液中に過剰にあれば、動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や脳梗塞につながります。
また、すい臓が溶けてしまう「急性すい炎」も引き起こします。すい臓が溶けてしまう病気ですから、一歩間違えると命に関わることになります。
血液中の中性脂肪が高い状態(過剰状態)が持続すると、大きな病気につながるのです。
高中性脂肪(TG)血症の診断の流れ
脂質異常症 診断基準
トリグリセライド(TG):中性脂肪 (正常範囲:50-149) |
150以上 高トリグリセライド血症 (中性脂肪) |
「中性脂肪が高い!」と言われるのは、健康診断や人間ドック、たまたま病院で受けた血液検査等の場面です。
基準値は、早朝空腹時(絶食10時間以上)で150以上です。これを超えると「高中性脂肪血症(脂質異常症)」
なぜ中性脂肪(TG)は高くなる?
中性脂肪が上がる原因は、主に3つです。
一つ目はアルコールの摂りすぎです。アルコールは中性脂肪のコントロールシステムを刺激することにより中性脂肪を増加させます。
二つ目は、糖質の摂りすぎです。炭水化物(米、パン、麺)や砂糖等は中性脂肪の原料となるため、摂りすぎにより中性脂肪は増加します。
三つ目は、遺伝的な体質によるものです。食生活に問題がなく、家族に同じような方がいる場合はその可能性があります。
高中性脂肪(TG)血症の治療の流れ
高中性脂肪(TG)血症と診断されても慌てないでください。
中性脂肪は、測定した条件で大きく数値が変化します。食前と食後では全く違いますし、前日に食べたメニューや飲酒の有無によっても変わります。一度、きちんとした条件のもと(早朝空腹:絶食10時間以上)再検査することをおすすめします。
それでもやはり高いとなれば、治療しなければなりません。
まず、飲酒をする方は、飲酒量を減らすことが大事です。
また、食生活では、炭水化物の過剰摂取が中性脂肪の数値を上げるので、注意が必要です。
それでも、数値が下がらない人は飲み薬を飲んだ方がいいかもしれません。特に血管への障害が強い方は必須です。
脂質異常症からの動脈硬化とは・・・
生活習慣病(糖尿病・高血圧・脂質異常等)は、最終的に動脈硬化(血管がボロボロになるイメージ)により、血管が詰まったり、破けたりします。
脳や心臓の血管が詰まるのは、脳梗塞や心筋梗塞です。血管が破けると、クモ膜下出血や大動脈破裂等です。いずれも、命にかかわる大変な病気です。
これらは、全て、長い年月をかけて血管に負担がかかり、じわじわ動脈硬化が進んでいった結果として現れるのです。
イメージで言うと、新品の水道管に、汚れた水や過度な水圧が長い期間かかり続けることにより、さびついたり、ひび割れを起こす現象とよく似ています。
このような、水道管の老朽化は、水道会社の方々により日々点検され修理されますが、人間の血管は、そう簡単に点検できません。
「血液検査でわからないのか?」と思うかもしれませんが、残念ながらわかりません。
会社で受ける健康診断や標準的な人間ドックでもわからないのです。
現代の医学の中で、血管の状態を詳しく調べるためには、カテーテル検査や造影剤を使用したCT検査が必要です。
しかし、全く無症状の人に、これらの検査をするのは、体の負担や費用を考えると、現実的ではありません。
それでは、自分の血管が、今、どのような状態なのかを知るためには、どうすればいいのか?
それが、「超音波(エコー)検査」です。
頸動脈エコー検査(動脈硬化を見る)
「超音波(エコー)検査」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
簡単に言うと、超音波(エコー)を放出する器具を体に当てて、体の中を見る検査です。
妊娠した時に、お腹に機械を当てて赤ちゃんを見るのも「超音波(エコー)検査」です。
レントゲン検査やCT検査も体の中を見る検査ですが、放射線を放出するため、体にはやや負担がかかります。のため、何回やってもいい検査ではありません。
一方、超音波(エコー)は無害なため、体に優しい検査であり、何回やっても大丈夫です。検査自体も痛くもかゆくもありません。
頸動脈(心臓と脳をつなぐ血管)
「頸動脈」は、心臓から脳に血液が送られるための大事な血管であり、全身の血管の状態を見るための重要なポイントになっています。
この「頸動脈」に、皮膚の上から超音波(エコー)を放出する器具を当てることにより、あなたの血管がモニター画面に写し出されるのです。
血管がどれくらい傷んでいるかがひと目でわかります。